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クラインフェルター症候群とは~症状や原因は?治療は可能?

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クラインフェルター症候群とは~症状や原因は?治療は可能?

近ごろではすっかり知名度を上げた男性不妊症。特に、精液中の精子の数が少ない「乏精子症」や精子が全く見当たらない「無精子症」、あるいは、“ED”こと「勃起障害」などは、実に有名な疾患です。

いずれも、宣告されれば男としてショックは否めませんが、その多くは、医師の診察を受け、正しい治療や指導を受ける事で妊娠可能になります。そう、まずは夫婦で検査を受け、不妊の要因が男女どちらにあるのかをはっきりさせる事が大事なのです。

ただ、そんな不妊症の中でも、聞いたことない病名を言われると、ショックより先に訳が分からなくなり、益々パニック状態に陥ってしまいます。取り分け、『クラインフィルター症候群』と診断された場合、男性はもちろん、女性も思わず“何、それ?”とおっしゃる方が多い事でしょう。

『クラインフィルター症候群』とは? その発症のからくりに迫ります

『クラインフィルター症候群』は、100%先天性疾患です。それも、受精卵が出来た瞬間に発症する正しく持って生まれた病気なのです。

よく、精子には性別があって、その性別が生まれて来る赤ちゃんの性別を決めると言われますが、ならば、卵子には性別がないのでしょうか? いえいえ、決してそんな事はありません。

私たち人間は、女性染色体と言われる「X染色体」と、男性染色体と言われる「Y染色体」の2つの染色体を組み合わせて作られています。この染色体は全て、両親から譲り受けるものです。

という事で、お母さんの細胞の一部である卵子にも、ちゃんと性別はあります。ただし、卵子の性別は必ず雌と決まっています。

それは、女性が作るからと言えばそれまでですが、それ以上に、女性の性染色体はX型だけで構成されている「XX」であるためと言った方がいいでしょう。一方、男性の性染色体はX型とY型を組み合わせた形になった「XY」です。

そして、新しい命の源となる卵子と精子は、この2つのお父さんとお母さんの持つ性染色体が2回の細胞分裂を繰り返す形で作られます。例えば、お父さんの場合だと、最初の分裂でX染色体とY染色体に切り離され、その後は、それぞれが分裂して雌のX精子と雄のY精子が大量に作られるのです。

けれど、お母さんの性染色体はX染色体しか持っていない訳ですから、たとえ分裂してもXのまま。基本的には100%X卵子が出来る事になるでしょう。

そこで、お母さんの作ったX卵子にお父さんの作ったX精子が入り混めばXXの受精卵が、Y精子が入り混めばXYの受精卵が出来るという訳です。当然、XXの受精卵は可愛い女の子に、XYの受精卵はカッコいい男の子にせいちょうします。

ところが、困った事に、両親の性染色体が1回しか分裂しない、もしくは、全く分裂しないまま卵子や精子が作られる事があるのです。すると、3つ以上の染色体を持つ奇形の性染色体が作られてしまいます。

たとえば、お母さんの性染色体が分離しないままXX卵子が作られると、お父さんのX精子とくっついたXXX性染色体やY精子とくっついたXXY性染色体が作られてしまうという訳です。前者はまだ、全てが女性の生殖体ですから、さほど大きな問題はないかも知れません。けれど、後者になると、かなり女性よりの男性になる可能性が出て来ます。

また、お父さんの染色体が分離されないまま作られたXY精子がお母さんのX卵子とくっついても、同じようにXXY受精卵は出来、もし、両親ともに分離出来なかった場合、XXXYという受精卵が出来る事になるのです。

さらに、お母さんの生殖細胞は、いくつに分けてもX型という利点を持っている反面、その分け方に失敗すると、XXX卵子やXXXX卵子が出来る可能性も秘めています。つまり、最高でXXXX卵子+XY=XXXXXY受精卵が出来るという事です。

ただ、流石にXXXXXYという性染色体を持っている人は極めて少ないと見ていいでしょう。しかし、その一歩手前のXXXY染色体を持つ人は案外多く、XXYの持ち主においては、今や600人に1人はいると言われています。

実は何を隠そう、このXXYやXXXY、XXXXYと言った女性染色体を余分に持った男性生殖体を持っている人たちこそがクラインフィルター症候群です。1942年にアメリカのハリー・クラインフェルター医学博士らによって発表されたところから「Klinefelter syndrome」と命名されました。

クラインフィルター症候群の特徴と症状

『クラインフィルター症候群』は、お父さんもしくはお母さん、または両方の性染色体が細胞分裂に失敗した結果発症します。しかし、なぜ、細胞分裂がうまく出来ないのかという理由は分かりません。正しく神様のいたずらで、原因不明の疾患であると言っていいでしょう。

ただし、クラインフィルター症候群には様々な特徴があります。まず何と言っても、対象となる性染色体の形は、複数のX染色体と1個のY染色体を持つ人と定められていますから、100%男性疾患です。

実際、X染色体ばかりの性染色体が出来ても、女の中の女になるだけで、それほど大きな問題ではないでしょう。また、X染色体よりY染色体の数の方が多いXYY性染色体が出来る可能性も極めて低いものと考えられます。

それに対し、複数のX染色体+1個のY染色体という性染色体は、様々な形で作られる確率は高く、日本国内の患者数は6万2000人。約1000人に1人の割合です。中でも最も多いのがXXY型で、600人に1人はいると言われています。

当然ですが、X染色体の数が増えれば増えるほど奇形は大きくなり、重症度は増します。XXXYになれば、心身の女性化は否めないでしょう。特に思春期を過ぎると、乳房が形成されて来る人も珍しくないくらいです。

しかし、たとえXXYでも、多少の女性化は否めず、背は高く、手足も長いのに、細くて丸みを帯びた柔らかい全身を持つ人が目立ちます。また、髭やすね毛などが殆ど生えない、優しい目つきをしている、声が高い。あるいは、物静かだったり、気弱だったり、腕力が弱い、運動能力が低いなど、外見的にも、内面的にも女性のような雰囲気漂う人が大勢います。

さらに、元々染色体異常ですから、それに起因した免疫力の弱さや発達障害を持つ人も少なくありません。けれど、その一方で、自他共に気が付かないまま成人する人も多い疾患です。

確かに、スラリと背が高くて、しなやかな身体、優しい顔つき、おとなしい性格の男性と言えば、今やファッション誌を開けばよりどりみどりです。特に女性が強靱化した昨今、草食系男子としてモテモテのタイプだろうとも思われます。

そのため、たとえクラインフィルター症候群の男性がいても、周囲は当たり前のように受け入れる事が珍しくありません。また、自身の外見や内面を気に入り、それを生かした女性としての生き方をする患者さんも増えつつあります。もちろん、クラインフィルター症候群は性同一障害ではありませんが、それだけ彼らが生きやすい世の中になった事は確かなようです。

という事で、軽度のXXY型で、ごくごく軽い発達障害を持つ人の場合は、自他共にクラインフィルター症候群である事に気が付かないまま成人し、恋愛し、結婚する人も大勢言います。何しろ、綺麗な女性を見れば勃起し、自然に射精も出来るという事で、正常な性交渉が出来る人が圧倒的多数なのですから、むしろそれが自然の流れだと言えるでしょう。

ところが、その後に最大の弱点である精子製造能力の弱さという現実が突きつけられます。実はクラインフィルター症候群の男性は一律で、男性ホルモンである「テストステロン」が相当量不足しているため、9割以上が男性不妊なのです。

クラインフィルター症候群の治療法は? 不妊症を奪回出来るのか?

『クラインフィルター症候群』である以上、どんなに軽度であっても、テストステロンの分泌不足は否めません。そのため、生殖器の発育自体が不十分で、控えめな男性器を持つ人が多いものと思われます。しかし、それでも、大半の男性は、勃起から射精まで、正常にこなせますし、もし、難しくても、ホルモン治療を受ける事により、可能になる事がしばしばです。

ただし、比較的軽度であってもクラインフィルター症候群である以上、精腺や精巣機能が未成熟で、精子を製造する事が出来ない「無精子症」や重度の「乏精子症」である可能性が極めて高いものと見られます。
そのため、不妊治療を受けるにあたり、検査をして初めて発覚する人が多いという訳です。これは男性ホルモン不足の象徴のような症状で、染色体異常による男性不妊の中では最も患者数の多い疾患です。

そこでまず、クラインフィルター症候群そのものに対する治療として、ホルモン療法が勧められます。ホルモン剤には飲み薬もありますが、副作用が強いため、日本ではもっぱら、筋肉注射で月に2回から4回、テストステロンを補充するものが主流です。

これにより、様々な心身の不具合が解消されるだけでなく、性欲増進も期待出来るでしょう。ちなみに、クラインフィルター症候群は国の難病指定を受ける疾患で、ホルモン注射は健康保険が適用されます。

けれど、いくらホルモン補充しても、そう簡単に健康体の精子を大量に生成出来る訳ではありません。そのため、中々不妊奪回とは行かないのが現実です。

ただ、たった1匹でも精子が作れれば、それを採取し、顕微授精で授精させる事が出来ます。さらに、今は医学が進み、生殖細胞だけでも精巣内に存在していれば、それを卵子に移植し、新しい命を芽生えさせる事も出来るのです。

そう、無精子症イコール完全不妊ではなくなった訳で、それと同時に、クラインフィルター症候群でも名実ともにパパになる事は十分可能になりました。そうなると、精子バンクの利用や親になる事を諦める決断を出す前に、無精子症の不妊治療を得意とする不妊クリニックや泌尿器科に相談する事が大切でしょう。

実際問題、クラインフィルター症候群は感知不可能な病気で、治療法としては、先のホルモン療法しかありません。ですが、それで自然妊娠を望むのは、かなり厳しいものがあります。

でも、だからこそ、検査を受け、判明して良かった。一日も早く、適切な不妊治療を開始す事が出来るではありませんか。

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